『リーダシップの旅』という本を読んで、自分の経験に照らして考えた。

本の中で「後ろのドアを閉める」ということが書いてあった。
以下に引用させてもらう。
「人生はいくつもの選択肢によって構成されている。
意識していようが、無意識だろうが、私たちは無数の選択を繰り返しながら生きていく。
小さな選択が転機となり、結果的に人生を大きく変えてしまうことだってあるだろう。
目の前にいくつものドアがあり、
私たちはそのうちのどれかを選んでいるとイメージしてもらえば、分かりやすいかもしれない。
どの大学に行って何を専攻しようか、いつ結婚して子供をもとうか、会社を辞めるべきか残るべきか。
どのドアを選ぶかによって、私たちは人生を自ら形づくっている。
大事なポイントは、目の前のドアを開けるためには、
後ろのドアを閉じなくてはならないということだと思う。
より正確に言うと、前のドアは後ろのドアを閉めないと開かない仕組みになっているのだ。
この後ろのドアを閉める行為において、私たちは悩み、苦しむ。
後ろのドアを閉じられないから、前のドアを開けられない。
蓄積した信用をあえて捨てるという行為は、後ろのドアを閉めることだ」

私にも、結婚と子供をもったこと以外に、
今までの短い人生の中で「大きく人生を変えてしまう」選択が2度あり、
2度の大きな選択までには、色々な局面、様々な状況、小さな選択が幾つもあった。
この選択、決断の経験は、仕事、生活、いろんな意味で、今も影響し続けている。

一度目は前の会社で社長になった時。2度目は社長を辞め、同時に会社を辞めた時。
一般的には、退任し退社する時に「後ろのドアを閉める」イメージが涌きやすいのでは。
しかし、私の場合は、社長になる時も「後ろのドアを閉める」必要があったのだと思う。

その理由は、例えば、
社長になる前の職位は製造課長。
同族会社で、私は少数株主。
決定的なのは、私は、元々社長になるライン上にはなく、
既に、親の代から私たちの代に継承(跡継ぎ)されていたことなど・・・。

当時の経営状態は、今考えても「ぞっとする」状況であり、
元の経営者との思考、意見、手法の違いは大きく、
最終的な選択肢として、会社を見限って辞めるか、
経営者となり再建を目指すかの二者択一であった。

結論は、平穏な継承は困難で、万が一、経営刷新を強行、実行した場合、
社員の動揺、客先、取引先へ与える影響、金融機関との関係など、
多くの、熟考しなければならない問題があった。

しかし、一番強く、長く考えたのは自分が会社を辞めればいいのではとの問いである。
その問いへの結論は、簡単には出せなかったし、揺れ動いていたと思う。
結局、辞めない結論を出したのであるが、
次は、全責任を背負いきれるか否か!やり遂げることができるか否か!
再建計画は、本当に実効性があるか否か!協力者はいるか、出てくるか、裏切られないか!
現実的になってくると、次から次へと不安なことが出てきたのであった。

時間も掛かり、簡単ではなかったが、
「後ろのドアを閉める」決断ができ、「前のドアを開ける」ことができた。
ただ、「前のドアを開けて」入った部屋を思い出すと、今でも寝汗をかきそう。
しかし、このときの経験があったからこそ・・・。と日々「よかった」と思っている。
「よかった」と思えるようになった理由はまたにしよう。